第7回 「慰安婦決議案」第4回 最終章
      慰安婦決議案、米下院本会議で奇妙な現象を伴いつつ可決、
      これからの日米関係・裂けつつある日米安保   2007年8月22日

[目次]                                          
     一.「慰安婦決議案」、7月30日下院本会議で可決。その翌日には 
     二.決議案可決と、そこに至った失敗の原因
     三.米国は、日本を完全に振り払おうとしている
     四.むすび

 

一、「慰安婦決議案」、7月30日下院本会議で可決。その翌日には
 7月30日(日本時間31日午前)、事実と相違した内容を含む日系米国人マイク・ ホンダ下院議員提議の従軍慰安婦決議案(以
  下、決議案)が米国下院本会議で可決さ れ、日本にとっても米国にとっても忌むべき決議として歴史に残ることになった。
 決議案可決のニュースは、早速、日本の主要紙(「読売新聞」を除く)の[電子版] で伝えられたが、NHKの19時のニュースでは
  一切触れられることはなかった。
 筆者はこの慰安婦問題を、昨年9月から今回で4回目の取り上げとなるのだ、前々回には「下院外交委員会での決議案採択は
  『六四』で見送りになるだろう」と大見栄 を切った。しかし、この通りどうにも言い訳が効かないほど見事に外れた。
 負け惜しみだが、この結末に「無念さ」を持つと同時に、米国政府、議員・マスコ ミ、そして米国民が内包している「慰安婦問題」へ
  の無定見な賛成の深層的理由につ いて表面的にしか理解できない。
 筆者のこのテーマでのコラムは今回が最後となるであろうが、ホンダ議員は今後と も「米兵捕虜補償問題」、さらに中国が「靖国
  神社参拝」の後継カードとして考えて いる「南京事件」その他の抗日案件を、同様の形で取り上げてくるだろう。一方、カ ナダ議会
  でも、一時棚上げになった同様の決議案の再発議かなされることだろう。
 それでは、下院外交委員会・本会議で起こった奇妙な現象を含め、決議案可決に至 るまでを時系列的に振り返えることにする。
 まず6月26日に、下院本会議決議案可決の前提となったホンタ議員の決議案が外 交委員会で採決された。
 採決結果は「39対2の圧倒的賛成」と報道されたが、実は採決時の41名のほか に9名の委員会欠席者がいたのた。この報道は
  日本、韓国メディアのうち1社だけで あったが、採決に影響を与える員数ではないが、注目に値する事態であった。
 この決議案採択前には意外なことが起きた。何かといえば、「日米同盟の重要性を確認する」という、今回の決議案の趣旨に反す
  るような決議案を別途に採択しようと いうことになったのだ。
 この別途決議案内容は、超党派の民主党のランス議員、共和党のロイス議員、ダンクレド議員、ポール議員らによる「昨日のこと
  に誤って対処すれば、正しい明日を得ることは難しくなる」というものだが、その実は議会指導部(民主党)の意向に沿ったものだと
  もいわれる。これは表向き日米同盟を建前としてはいるが、日米安保を横 目に見た、「経済のみを重視した」ものという本音もうか
  がえそうだ。
 この外交委員会での採択後、上院での決議案可決に向けての韓国系・中国系それぞれの複数団体の活動は活発化し、その内容
  は韓国メディアばかりでなく、米国メディ アでも報じられた。彼らの活動の中心はホンダ議員が提議した共同提案書への議員の署
  名を呼びかけることであったが、そのパワーの強力さは最初わずかな数名であった 共同提案者がみるみるうちに100名を超えさ
  せるほどの凄い勢いだった。
 とにかく中国系の世界抗日戦争史実維持連合会」などは、議員やロビーへの攻勢にはすざましいものがあるが、同連合会幹部の
  ディーン氏などは、「ラントス外交委員長は自分たちの運動を裏切っている(彼が自分たちに協力できないなら)もう新しい議員の選
  出の時期は近い」などと、脅しを平気で地方紙に述べるほどだった。
 この幹部の強気さに引き込まれるかのように、ラントス委員長は間もなく共同提案書に署名、またラントス委員長に歩調を合わせ
  るような署名者も続出した。
 一方、日本側の運動としては、すぎやまこういち氏を始めとする日本の有志が、ワ シントン・ポスト紙6月14日付に「真実」の意見
  広告を出したが、その真意は伝わらず、逆に、「議員の心証を逆なぜする結果ともなった」と、米国メディアは書き立 て、ここで一気
  に署名者数が増加しその総勢は167名にまでなってしまった。
 それより先、それまで決議案に反対していた反中国であるダナ・ローラバッカー議員は安倍首相の「河野談話」踏襲発言を伝え聞
  いて、決議案賛成に回り共同提案書の署名に加わっしまった。
 日本の有志たちは決議案の誤りについて指摘、その理由を訴えたのになぜ議員の心証を逆なぜしたのか、筆者は冒頭で「米国民
  が内包している「慰安婦問題」への無定見な賛成の深層的理由について表面的にしか理解できない」と述べたが、その「表面的に
  しか」すらも自信の持てるものではない。
 ところで、この167名というのは下院議員435名の38%に相当する数であり、 ホンダ議員をはじめ活動団体は、ひとまず「ヤッタ
  ー」とほくそ笑んだだろう。
 ところが肝心の下院本会議場では異変が起きていたのだ。
 7月30日の決議案可決を韓国のメディアの中には見出しで、「満場一致で可決」 と伝えた。日本のメディアは流石にそんなことは
  なかったようだが、しかし、「満場 一致」というのは真っ赤なウソだった。どういうことかといえば、決議案共同提案者 が167名もい
  たはずなのに、下院435議員のうち、当日の本会議場での出席者総 数がたった10名のみだったのである。
 要するに、中国系「世界抗日戦争史実維持連合会」および韓国系団体から、脅かされたり操られたりして共同提案者となった議員
  も、本議場での採決の立ち会いを避けたのだろう。
 それにしても、同僚の本会議出席者のあまりの少なさに驚いた本会議場の議員たち は、自分たちの名前が議事録に残ることを恐
  れ、ペロン下院議長に、採決方法を「発 声採決」にするようペロン議長に訴え、議長もそれを呑む代わりに「上院には持ち込まない
  わよ」とクギを刺したともいわれている。
 その結果、「発声採決」によって可決されたのである。それにしても、たった10 名でも採決ができる米国議会の採決規則というも
  のは一体どんな仕組みになっているのだろう
 この30日の決議案可決後のホンダ議員は記者会見で、「連合会の強力な推進なしには(可決)できなかった」と連合会の関与をこ
  こで公式に認めた。
 一方、米国下院での決議案可決の報告を受けた安倍首相は、7月31日の記者会見 で、「4月に訪米した際に、私の考え、政府の
  対応については説明してきた。こうし た決議をされたことは残念だ」と述べ、その上で「20世紀は人権が侵害された世紀だった。
 21世紀は人権侵害がない、世界の人々にとって明るい時代にしていくこと が大切だ」とだけ語った。
 筆者としては、「河野談話」容認という苦渋の選択を伝えたのに、それをも認めない向こうに対し、何を語っても理解を得られないな
  ら、今までのくり返しである、この コメントだけで十分だと思っている。
 まして、決議案の求める「日本政府の公式な謝罪声明」なんて、今後一切無視すべ きである。
 ところで、下院本会議で決議案が可決された翌7月31日の外交委員会では、前述の決議修正案「日米同盟の重要性を評価」(ア
  ジア・太平洋地域の安定強化や、テロ との戦いにおける日本の役割について謝意を示す、等)が採択された。
 この共和党のジム・サックストン議員作成の共同提案書に、何とラントス下院外交 委員長と並んでホンダ議員が署名していること
  をどう理解したらよいのだろうか。
 これは挙げたこぶしを振り下ろす前に、恥も外聞もなく二股の弥縫策を抜け目なく 講じたということだ。これを韓国「朝鮮日報」は、
  「慰安婦決議案が本会議で採択さ れたことを受け、これとバランスを取るために、対日礼賛決議案を採択した」と報道 していた。
 決議案と引換えに「日米同盟の重要性を確認する」とする決議案でお茶を濁そうとする相変わらずの「被保護国」対応は、殴った反
  対の手で相手の頭をなぜるような姑息なものである。
 このように、何ともすっきりしない形で始まり、すっきりしない形で終了した。
 この決議案問題については、たとえ、日米間に一時的離反が起きても、今後のためにも米国に反省を求めていくべきである。
 そういう意味で、すぎやまこういち氏らとは 別途との国会、地方議員、首長、ジャーナリストなど80名による、外交委員会での決議
  案採決に対する抗議書が在京米国 大使館に提出されたことは、この歴史観の相違から生まれた問題であるとはいえ、安易に一
  部の米国(および、外国からの侵略者たち)人の歴史観に合わせるべきではな く、正すべきは正そうとの姿勢の現われであろう。
 なお、この第二陣の抗議書が、第一陣の違っていたのは、文面は正確ではないか、 「過去の経緯などを振り返り、精査していただ
  き」というような警察捜査の「現場第一」主義的観点を訴えていたことだった。

二、決議案可決と、そこに至った失敗の原因
 筆者は、今回の結末となった日本政府の失敗の最大の原因は、安倍首相の突然とも いえる「河野発言」容認への軌道修正、また
  自民党議員らの「河野発言」完全抹殺行動を封殺したことにあると考えている。これが、前述の決議案反対の強力な助っ人ダナ・
  ローラバッカーを敵に回す要因ともなった。
 前々々回かに述べたように、防衛大学校の演説でうかがえるように安倍首相も軌道修正を悔やんでいるが、韓国のメディアには、
  この軌道修正の張本人は、「岡崎久彦氏」というご指名記事があった。
 ここに至るまでの全責任は安倍首相自身免れないが、だが責任の大半は、政府全体、 官邸スタッフの感度の鈍さ、対応能力不
  足、責任感の欠如に尽きると考える。
 それに加えてブレーンの不足も決定的である。良いブレーンが集まらないのは、政府・官邸・官僚組織に、「期待感」が持てないか
  らである。要するに、精魂を傾け手伝えば手伝うほど自分が全身全傷になるだけなので、身が引けてしまうのである。
 筆者は、官邸スタッフのみなさんは「広汎性発達障害」だと思っている。要するに 先が見えないのだ。例えば、安倍首相のぶら下
  がり会見の発言を聞いていると、あの原稿を書いたスタッフは、政府とは「将来政策の画定機関」「政策実行機関」であることをまっ
  たく考えず、「その場限り」の発言を安倍首相にリフレィンさせているこ とにそれが現われている。これもまた安倍首相の責任があ
  る。「沈黙は金」なのだ。 今回、この歴史的事実とは隔離した「決議案」が可決された原因を、岡本行夫氏に 言わせれば、米国人
  は「事実を客観的にみるより、歴史(経緯)を主観的にみている、 主観的な歴史観」によったものだとしている。
 しかし、米国の議員たちが「慰安婦の発生・経緯」を客観的に知ろうとしても、リベラル傾向の強い米国マスコミの報道に依存する
  となれば、とても客観的経緯の把握 なんてとても難しいのが実態だ。
 本来、冷静に考えれば容易に推察できるはずなのだが(たとえば、アメリカの高官 の中には「靖国問題は日本自身を傷つけてい
  る」という発言もあるように、歴史認識の問題ではどのような視点から捉えるかによって結論に違いが出るのは日本でも同様だ)。
 加えて、悪魔的行為として断定できるのは、前々回に記述した4月下旬の米国議会 調査局の議員の審議用資料、あれには裏が
  あったのである。
 この審議用資料は比較的公平な内容だったが、実はこれを配布する前にもう一つ議員用資料が配布され、この内容については
  詳知できないが、相当、ボロクソに、日本を叩いていたのだ。これによって「悪玉日本」が議員たちの頭に刷り込まれ、その後に出
  た審議用資料に忙しい議員たちは目もくれなかったことが容易に考えられる。
 だから決議案に対し、唯一公式に反対しているあのイノウエ上院議員でさえも、「 旧日本軍が慰安婦に対してとった行動は決して
  正当化できない」としているのも、こ れに惑わされたことが十分に考えられるのである。
 このよう背景に加え、リベラルな日本を始め米国、中国、韓国を中心とした学者たちが決議案採決に有利になる資料や数少ない
  文献までを掘り起こし、それを対日批判運動団体はマスコミをはじめ議員たちにばらまいていたのである。
 このような運動を日本側も遅ればせながら察知したが、対抗的な草の根運動を開始することもなく、ただ米国のロビリストたちに依
  存する、それも後手々となり経費の割には効果を上げれなかった。一方、情報戦争の最前線の在米大使館、総領事館では、米国
 の政府機関、議員たちやマスコミに一丸となって直接的かつ積極的に働きかけることもしなかったというのが実態のようである。
 また、どうも日系米国人の間での草の根運動が盛り上がらなかったのは、日ごろからのドブ板運動を行っていないところにも遠因
 があるようだ。
 その点、中国系団体と政府との結びつきは強く、2005年の日本の国連常任理事 国入りへの反対署名を中国系団体が集めた総
 数は何と4200万人もあったという。 ロビリストといえば、決議案採決・可決と直接関係があると断定できないが、決議案可決後の
 8月3日の上院本会議では、ロビー活動を規制する「政治倫理法案」が可決された。今回の「慰安婦問題」では、特に日本、中国、
 韓国のロビリストがかなり動いたといわれており、この「政治倫理法案」とは決して無縁だとはいえないだろう。

三、アメリカは、日本を完全に振り払おうとしている
 7月30日(現地時間)、下院での決議案採択の後、ホワイトハウスのスノー・ス ポークスマンは決議案が可決されたことに対し、
 「現時点ではどちらを支持している というわけではない。日本は重要な同盟国だ」と言った。政府の立場上とはいえ、こ れが今の
 ブッシュ政権の姿勢なのである。
 それにしても4月だったか、シーファー駐日大使の「慰安婦問題」の日本政府批判などは、駐日大使の発言としてはいかがなもの
 かと思われるものだった。また、同時期、ネグロポンテ国務副長官も同様の発言をしていた。これらを米国政府方針からの発言だ
 と考えるのは自然だ。とすれば、「どちらを支持しているというわけではない。 日本は重要な同盟国だ」とはどの面下げてのコメント
 かと聞きたい。
 このように、裏腹の姿勢は、安倍首相の訪米の時にも接遇にも現れている。
 日高義樹氏は「日本のマスコミは今まで歴代の日本の首相が受けたと同様の『国賓待遇』だと思っているが実態は違って」いるの
 だと、述べている。
 また、「『北朝鮮には今後も厳しい姿勢で臨む』という共同声明が出されたものの、 北朝鮮問題で日本が疎外され続け、拉致問題
 について十分な同情を受けることは難しいだろう」とまで言い切っている。もともと親米派である日高氏のこのような発言は、 日米
 間の離反が大きくなりつつあるという確信があってのことろう。
 筆者はこの日高氏の近刊書を見る前に、前回、米国政府の変質について、日本に機密漏洩の大きなミステークがあるにしても、
 次世代戦闘機の供与を国務省などによる 反対で見送ったのは、「何を意味するのか」と述べたが、この問題に限らず6ヵ国協議
 と北朝鮮の復帰にしても、日本の「拉致問題」について一切の配慮もないまま、米朝間で事を進めている(これも米国国務省ベース
 で)のは、日本を完全に無視しているからだろう。日本を排除した外交は、ニクソンの訪中以降、クリントンを除いて、 そう度々ある
 ものではなかった。
 これは、日本には世界規模的な構想力・対応力が欠けていることを米国が改めて痛感しているからではないか。
 米国は以前から日本が片務問題について、何とも思わない姿勢にいらいらしていた。 そして米国自身は財政的負担、イラン問題
 その他の重圧もあり、日本との各分野ての連携を再検証した結果、日本にもうこれ以上考慮する必要がないと考えるに至った結
 果の一つが北朝鮮問題であり、前々回で慰安婦問題は北朝鮮にも絡んでいると述べ たのもこのような推測からである。
 勘ぐるならば「慰安問題」は、日本自身が自分の立場を考え行動を起こす「起爆剤」 になればと仕掛けた?とも推測できる。
 それにしても、日本の何事にも煮えきらない態度に、米国は日米同盟の必要性に疑 問を投げかけることが多くなってきているとも
 いわれる。その結果か、今春、新任の小池百合子防衛相が米国の担当補佐官との面会もできなかったなどといわれている。 それ
 は、日本と話してもムダという認識しか持たれていないということでもある。 要するに、現在の米国政権は日米安保条約を今後どう
 するか考えているのではと推測することもできる。今の米国政権の状態からすれば、思いつけばすぐ日米安保条約 の廃棄を言い
 出さないとは限らない。日本の一部の人間はそれに気がついてはいるが、 自民党、民主党の何割の議員がそれに気づいている
 のだろうか。
 不遜な言い方だが、日米安保条約は「廃棄宣告から1年で解消される」という規約があることを議員ばかりでなく官邸のスタッフの
 何人が知っているかだ。これこそ、 リスク・マネージメントとしての最大の要諦として知っておくべきことだ。
 現状の北朝鮮に対する米国政権の対応からすれば、「テロ国家」の指定解除が近い 将来あると考えても決して間違っていると断
 言できる状態ではない。
 日本が今後、日米関係を考える場合、まず「日米安保条約」を念頭におき、万一、 廃棄通告をされる前に、積極的に協調できる何
 本かの柱を立てた改訂案を日本側から 出せる準備を整えなければならない。歴史上では、「同盟関係が永久に続いた例はな い」  
 といわれる。となれば、やはり、日米同盟堅持のための再構築か改訂のための準備という両面作戦が必要となる。
 そして肝心なことは、米国民主党が政権を執ったらどうなるかは判らないが、共和 党政権は「中国を潜在的敵」とする方針を200
 6年2月に持ったということを忘れてはならない(「産経新聞」06年2月18日他、NSSC2006)。
 それは、2006年2月14日、米国下院国際関係委員会(現・外交委員会)において、中国が「アメリカの脅威」であるとは明言して
 いないが、「中国はアメリカの 味方ではない」との結論を出している。このことは、米国は中国との協調関係は崩さないが、決して
 「心から許した相手」としていないということである。
 従って、カネボケしている経済人に振り回されることなく、日本にとっての中国対 策、かつ、米国にも寄与できる柱も準備の必要が
 あるということになる。
 そして、現実的な対応を求めてくると考えられる今後の米国に対していくには、「 防衛」思想から離脱し、「国防」の観点からの国策
 を樹立していかなければならない という問題への戦略も必要となることだろう。

むすび
 ここにきて7月の参院選の自民党の大敗、これを日本のマスコミは「金正日が高笑 い」と大きく報じた。
この自民党大敗を米国はどう感じたか。「日本=日本政府は頼りにならない」と考 え、やはり、「日本を振り切ろうか」と考え始めたとみても決しておかしくない。
 そんなところへ、「テロ対策特別措置法」の延長問題で、民主党小沢一郎が「延長 はない」と言い出した。困ったのは自民党だけではない。米国も困ることだろう。
 果たしてどうなるか。小沢さんは、沢山勝手なことを言い出して自民党や米国を追 い詰め、結局は「石油のシーレィンの問題を考えれば」と手を打つだろうと思う。
 過去にも問題が多い小沢さんだが、今回の「生活が第一」という台詞は、誠意ある ものではなく、単なる参院選向けである。
 それは、「プレジデント」(平成11年2月号)のインタビュー記事にこうある。 「国政とは国民の生命や生活を守ることにほかならない。それを突き詰めれば国防、 安全保障ということになる。国政から安全保障をマイナスしたらゼロになる、と言ってもいい」。これを読めば、彼の言っていた「普通の国」が浮かぶ。それを選挙のた めに順番をホイホイと変える小沢さんが信じられますか。
 民主党の寄木細工はひどいが、自民党の寄木細工もひどい。しかし、筆者は小沢さんも民主党も信用しない。
 慰安婦問題に戻ると、一部の米国(人)が「外人部隊・インベーダー」によって侵 略されてしまった結果だと思っている。
 今回の「慰安婦問題」はすでに何年か前に、米国の最高裁で却下されたものを二重訴追している、これは米国の最高の権威を傷つけているのである。
 またこれから出てくるであろう「米兵捕虜補償問題」は、米国の国内問題であり、 これも、米国は解決済みとしている問題である。
 それを何々系米国人ということで、内政干渉に等しいこの問題を取り上げ、他人の家に土足で入り自分勝手に行動する彼らは、母国への貢献で自己満足させ、点数稼ぎをしたいたげのインベーダーなのである。
 これと同じ状態が日本にも起きようとしている。民主党は「人権擁護法案」「外国 人地方参政権」を上程し、国政と国民生活を混乱に陥とそうとしている。
 ある地方ではすでにその手の人間が行政を牛耳っている。それを恒常化させようというのであり、その法案化への活動はすでに再蠢動している。
 また、地方参政権に関しては彼らの望むものは幅広いが、地方行政への参加によって自分たちの権利を守るためとしながらも、住民たちの権利を浸食しようとしている のである。そして民主党として、見返りを期待しているのは「ジェンダーフリー」の 拡大に対する彼らの協力・支援である。
 これではまさに「外人部隊」に乗っ取られた米国と同じになってしまう。
 さらにこの先の日本の諸問題が心配される中、国民の皆様方は「民主党」「年金問 題」万歳で、それ以外の日本に立ち塞がる諸問題については全然無関心。まさに、日 本人の「総白痴化」いや7割が「白痴化」してしまっている。
 ただここで、民主党万歳が単に一時的な風・ムードであるのかをしっかりみておく 必要がある。なぜかといえば、前回の参院選も民主党の得票数が自民党を上回ってい ることである。それが今回自民党にお灸を据えることを可能にし、反省を促す意味では大きな効果があった。
  しかし、日本国としては内向きの問題だけに拘泥していたら、必ず、世界からシッペ返しがくる。今回の「テロ特措法」などは、国民はマスコミの誘導などもあって民主党の「延長反対」に、その及ぼす影響の実態をわからないまま賛成している。
マスコミが意識的だとは断定できないが、なぜかこの国際的にも関係が深い「テロ 特措法」の報道を抑えているような感がしてならない。
 お灸を据えられた自民党は、お陰で病から逃れようと気合いを入れるが、据えた側は「これでお役目が済んだ」とばかり、今度は政権に近い場で精一杯うま味を味わお うと、その場にしがみつくことに懸命になる。その結果は、お灸の熱さを怖れて患部にメスを入れることもなく、派手なパーフォーマンスにますます走るようになる。これでは、国民が「トロイの木馬」を引き入れたようなものである。
 福沢諭吉は「政治を良くするには、国民の民度が高くならなければ」と言っていたが、 あれから100年近いのに、その民度が高くならないのは政府の責任、いや国民の責任だろう。なぜなら、石を投げれば当たるのは高学歴者ばかりの時代だからだ。

[後記]
 今回の原稿は、自民党大敗に続く米国下院での「慰安婦決議案」可決報道を受けた後 の8月5日に書き上げた。実は、この原稿に掛かる前、知人から「慰安婦問題」について書いた雑誌が出来上がったら送付する」との連絡を受けていたが、その雑誌「自由」9月号は8月20日に到着した。
 そこで、2週間ばかり氷漬けだった原稿に、池田氏の主意を拙いなりにまとめてここに書き加えられたことは、「慰安問題」の背景にある複雑さを浮き彫りさせる上で非常によかった。
 題名は、池田憲彦※「僥倖としての米下院の慰安婦決議」。一見すると奇異な題名だが、筆者のように広汎性症候群に犯されていては書き切れるような内容のものではな い大いに異なったものだった。
 筆者は、単に今回も経過・結末をストリー的に追い、一方、池田氏は1930代の新渡戸稲造の「米国の東洋観」演説からはじめ、鈴木貫太郎首相の「ポツダム宣言」受 諾如何に関する「黙殺する」発言、ブッシュ大統領の「対日戦勝利60周年」演説などが今回の問題とも関連している点をヒストリー的に追い、その核心に迫っていた。 以下は、その要点を簡単に述べることにする。
  ●諸悪の根源は「河野談話」。そして、その後も学習がないままの55年間の「村山山談話」、「小泉談話」。
    これらの状況によってホンダ議員、米国政府・議会に、よいように振り回された。
  ●4月27日の平沼赴夫議員らの「日米両国での慰安婦問題に関する共同歴史研究」 「河野談話の歴史的検証」の提案の重要
   性。 筆者としては、例の通りストリー的に追っていたがために、この平沼提案を本文で落としてしまったことを反省させられた。 
  ●(日本の)有志議員が米議員に提唱(上記の「共同歴史研究」)しても相手が乗らなければ、せっかくの提案が棚ざらしになって
    しまう。これも漫画になるかどうかは、不本意ながら下院本会議の議決で決まる。
    筆者は、この提唱が直接の影響を与えたかどうかは分からないが、前述したように下院本会議場への出席が10名であったこ
    とから、議員たちはそれぞれの思いを深 くした結果であった、と考えている。
    池田氏に敢えて反論するとすれば、次の一点だけであった。
  ●加藤良三駐米大使としては、「河野談話」があるゆえに下手にロビー活動をすれば 恥をかくことになる。
    筆者も、その点を認めないわけではないが、「河野談話」をはじめとする諸事項を事実としてはっきり認めた上で、その裏面の
    状況をどれだけ誠実に米国政府・議会 ・マスコミに知らせる努力をしていたか、それが全く欠けていたと今でも考えている。
      在米の一部の総領事館は新聞社の記事に対し正式に抗議したのに、駐米大使館その他ではそのような行動もなく、ばらばら
    の対応は「向かっていく」という姿勢をはなから放棄していたのである。こういう行動こそが在外公館として大事な役目であり、
    出先のインテリジェンスでもある。それを放棄していた、とみたのである。ペーパーを送るだけなら小僧でもできる。
 池田氏はさらに、今回の「採決」そして「可決」から何を学ぶべきかについて、以上のことを前提として「河野談話」の検証の必要性。そして、これに関連し「日本が実際に調べた結果の資料の一切合切を公表して、歴史に判断を委ねるしか」ないという。
 また、「それでもって同盟関係が揺らぐようなら、そのような同盟関係は、いざという有事に役立たないのは確かである。<中略>(結果としては)国家間の同盟関係は揺らぎはしない。むしろ強化されるだろう。対日批判に走る米議員の権威を失墜させた方が両国にとって有益である」と、述べている。
 今回の災禍を逆手に「災い転じて福」へと、大いに活用すべきだというのであろう。
池田氏は、内部崩壊の傾向が一段と進む現代日本に対し向かってきた、今回の外征は内的崩壊を一段と加速させるのではと考えたのだろう。
 それは、夏目漱石が「現代日本の開花」の講演の中で、「外的な文化の襲撃によって日本の文化が滅びる」と懸念していたのと、通底しているのではないかと思う。
 「日本の文化が滅びる」。これはあの「三四郎」の中で、髭の先生に『日本は滅びる』と言わせたものの敷衍であるが、漱石は常日頃から、日本は内部的崩壊の念を持ち続けていたから後年の「現代日本の開花」でも改めて和歌山の一般大衆の前で表明したのだ。
 池田氏が、題名に「僥倖」と付したのは、日本が内部的崩壊が進んでいる情勢をこの外征によって日本人自身が改めて気づくよう、ホンダが日本人の「覚醒」への起爆剤を投げつけてきたことに対して「感謝」するという意味で使ったのであろう。
 注] 池田憲彦氏については、過般、李登輝前総統が来日した際の「後藤新平賞」授賞 式では、多くの関係者、マスコミを前にして 、受賞の喜びを述べるとともに、自 らの後藤新平研究について、多くの示唆を与えてくれたことを謝して、「池田憲彦氏の」と、名前を二・三度挙げてその協力を讃えていた。
     そこには、李登輝前総統の日本、世界の動向、加えて諸事に対する目配りの深さがあり、筆者は感服した。