| 第19回 「末は博士か大臣か」 2008年4月 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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筆者自身、何て古めかしいタイトルを付けたものだと思う。もう、こんな言葉は死語に近いだろう。しかし 今、打ち込んで変換したらさっと出てくるなんて、人間社会では死語になっていても機械は記憶している。元 来、人間なんて勝手なもので忘れてならないものを忘れてしまう。 何を言わんとしているかといえば「志・目標・夢」。実態はともかく、子供たちがこの「三点」をいかに持つか が、今こそ必要な時代ではないだろうか。 若者が荒れ、乱れまくっているのは、「自分の目標を持たないまま成長しているか らだ」と警鐘を鳴らし ている識者がいたが、まさに言いえている。 小学校1年生の「なりたい職業」の2位が「消防士」 落語でいう「前振り」が長くなったが、今回は、小学生の『大人になったらなりたい職業』にはどんな傾向が あるのかをみてみたい。 例年4月になると、小学生のこの種のアンケートが各新聞などで報じられる。 今年も4月6日の「時事通信」には、クラレの調査結果が載っていた。 そこには、小学1年生男児のなりたい職業の2位が「消防士」となっていた。 1位は、長年続いている「スポーツ」(サッカー、野球など)だったが、それにしても「消防士」がこの位置に あることに誰しも意外な感がしただろう。 そこで、平成12年からシコシコと溜め込んでいるメモを見てみたら、「消防士」は結構しっかりと位置を確 保していた。 今回の調査はクラレのものだが、第一生命の平成13、14年調査では17位と8位に位置している。おお まかに他の職業についても記すと、 平成14年 平成13年 1位「学者・博士」 1位「野球」 2位「サッカー」 2位「サッカー」 3位「野球」 8位「学者・博士」 8位「消防士」 17位「消防士」 次に、クラレの小学生と親の調査結果を年度別にして比較すると、
これを見ても、「消防士」が年々増加、また、「学者・教授」はかろうじて残っている。また「職人」が意外な 位置にあるのは、宮大工などの伝統建築への隠れた憧れかなと考えた(マスコミでは、この職人に一切のコ メントがないのは、なぜか分からない。また、村上龍「ハローワーク13」にも「職人」の紹介項目はない)が、 果たして当たっているかどうかは分からない。 小学生の希望順位は、上記の年度以外を見ると10位以下では変動が激しいが、上位についてはそれぼ ど変化はない。一方、親たちの順位にほとんど変化がなく、現実と願望が適当に組み合わさっている。 親たちの願望は「公務員」がやっぱりトップ、小学生からは大分以前に敬遠されベストから消えている「会 社員」があるのは、当然安定志向からである。だが、「スポーツ」「医師」などは富裕志向を反映している。反 面なぜか、「職人」が入っていることに意外さを感じる。 筆者は、小学生雑誌、小学生用アニメを常時観る機会がないので、「消防士」が掲載、放映されているか は知らないが、もし掲載、放映されているとしたら、このような地味でかつ危険を伴うが大切な職業に憧れを 抱かせるようなマスメデ ィアが今でも活きていることには頼もしさとうれしさを禁じ得ない。 「消防士」の実態をどれほど知っているかは別にして この消防士だが、その内訳は公的な消防隊員と消防団員に大別されると思う。 これまたメモを見ると、消防隊員の状態はまずまずとしても、全国の消防団員数は昭和20年代には約2 00万人を超えていたものが、平成19年には89万2000人に減少し、地域の防災に支障が起きようとして いる。 団員の構成も40歳以上が39.0%、平均年齢は38歳。以前は自営業や農業が主体であったが、現在 では夜間にしか地元にいないサラリーマンが7割を占めているという。地域の事情、高齢化も大きく影響して いるのだろうが、このサラリーマンが7割を占めているということはすごいことではないだろうか。 以前なら、「困っていても知らないよ」と、知らんぷりしていた人が多かったと思われるサラリーマンが、常 勤ではないとはいえ、夜間にはそれなりに備えようとする気持ちが醸成されていることには驚くばかりだ。 そこには、例え無償・ボランティアであっても、地域を護ろうとする「志」、団結が感じられるからだ。 無償・ボランティアだということであれは、現代っ子が考えているのは消防隊員かも、となれば、とんだ筆 者の大きな思い違いということになってしまい、こんな大きな命題をすっかり忘却し書き進めてきたことを恥ず かしく思う。 しかし、小学生たちが「志・目標・夢」を持つことは良いことなのは、絶対間違いないと思う。そして、この先 成長していく過程(おそらく、中学後半)で、その方向性が変化するのは昔から極く普通のことでもある。 子供は、「「夢と最終目標は別物」が判る時期が来る、それまで大人は 昔の「末は博士か大臣か」とはまず親御さんの願望であり、次第に子供に伝播していったのであろう。現代 では何事によらずこの「あうんの伝播」は霧消している。また、現代の親たちの願望は、前表にある職業から もそれがうかがえる。 今回の職業のことに限らず、近年、子供の考えていることに大人が「口出し」して、止めようとすることが多 いのではないだろうか。その行為を大人自身は意識していないのだろうが、目先のことに注視するあまり、先 のことをみない結果でもある。近年、日本の子供・青少年が、世界各国に比べても「夢」を持つ割合が極端に 少ないのは、大人がとかく「そんな非現実的なこと」をの思いをそのまま先に口にするため、若い彼らは「夢」 を語れなくなってしまっている。 彼らの「夢・目標」が萎縮しているのは、子供への極度の干渉、ブレーキをかける大人たちに責任があ る。それをしたり顔で「今、子供には夢がない」と言っている、テレビのコメンティターたち、筆者も含めて反省 する必要がある。 子供たちに、将来の職業、その他で注意、たしなめる時は「公序良俗に反してはいけない」の基本限度内 で止めるべきだと考えるが、如何なものだろう。 「檻の外」の餌に絶対目を向けてはいけない、という規制をかけていることが 、大人に近づくにつれて、彼 らに「自分探し」という奇妙な命題を作り出させ、ますます、はまり墜ちる現象を社会に流行らせているのでは ないだろうか。 彼らにある時期に夢と目標を描かせていれば、「夢と最終目標は別物」だとということが次第に判る時期 が来る、それを待ってあげるのも大人の度量だろう。 小学生、青少年にとっては、「具現性が乏しいもの」だと、何とはなく判っていても、それを思い描くだけで、 本人たちの心は満たされているのである。 そして、彼らにとって一番大事なことは、描いていた夢を捨てた時、次に抱く夢へ近づくための自分自身の 「引き出し」を沢山持つことだろう。 そのためには、親御さんは、他人も認めないような忠告めいた不必要な発言は絶対慎んで、彼らが「引き 出し」を沢山持てるよう協力することである。 (2008.4.6) |
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