[目次]
一.米国社会の日本を見る眼は、以前に比べ「除け者扱い」が加速している
二.慰安婦決議案を「日本は気にすることはない」というが、各国首脳も気にしてい
る
三.強制徴用はあったのか、CNNの「日本の謝罪」に関するアンケート調査
四.日本政府・衆参院議員・日本大使館の動き
五.米国議会関係の動き、米国議会調査局の調査報告書
六.慰安婦決議案採択の可能性は「半々」と考えた理由
昨年9月にも慰安婦問題について述べたが、その後の動向について改めて考えてみ
たい。結論を先に述べるとすれば、慰安婦決議採択の可能性は「半々」とみている。
9月の時点で筆者は、米国の政治、社会などの情勢が、これほど日本を追い込む状態
に入ってるとの認識を持ち合わせていなかった。しかし、昨秋後半になってこのよう な雰囲気が蓄積されているなと感じるようになった。
一、米国社会の日本を見る眼は、以前に比べ「除け者扱い」が加速している
それは、米国の北朝鮮問題に対する取り組みや中国との「米中戦略対話」にみられる米国政権の弱腰姿勢が回りめぐって、日本にも来ていることにもみられる。
北朝鮮問題の状況は周知の通りだが、「米中戦略対話」などは完全に中国に屈したといっても過言ではないだろう。ポールソン財務長官は、中国のあのくそ呉儀ババァ
に対して、溜め込んだドルを「ユーロ化」するのをやめて欲しいと、わざわざFBR議長を帯同してまで中国に哀願しに行っているのである。
これを契機にさらに中国をヨイショするブザマさを加速させ、北朝鮮問題も結局中国の強気な言うなりなってしまっている。その先景の一部ともいえるのは、昨年に中国の駐米大使館のナンバー3が、「中国と米国とは理念が違うが、戦略は共有している」と、まるで米国をなめたような発言を許してしまっていることにもみられた。
米国政府の日本に対する対応の変化は、それまでにも度々あった。
たとえば、2003年、日本ではブッシュ大統領と小泉純一郎首相の関係が良好だと浮かれていたあの時期のことだ。
ホワイトハウスは、世界の人々が「アメリカの政治」をどう考えているかという世論調査を行った。調査の順番はイギリスから始まりヨーロッパ、中東、アジアと40数ヵ国が対象となっていたが、ところが日本は入っていなかった。「これはどうしたことだ」と思わせる、現実的に全く非情的な行為だと言わざるをえない。しかし、米国とはそういう国なのだ。
昨年来の国務省の北朝鮮に対するスタンス(ライス国務長官主導)もこれに似てお
り、日本をないがしろにして「テロ支援国家指定」解除に傾き、安部晋三首相はブッ
シュ大統領との会談においてストップをかけざるを得ない状況にまでなっている。
おかしいのは国務省ばかりでなく、シェーファー駐日大使などは、昨年は靖国神社
の「遊就館」の展示問題では、アーミテージ氏の抑揚ある批判と異なり、コテンパンに文句を言い、また、「慰安婦問題」では、3月9日には、安部首相発言を「日本が河野談話から後退していると米国内で受け止められると破壊的な影響がある」などと恫喝。その後もニューヨーク・タイムズ紙に「旧日本軍に強姦された」などと言
う始末である。これが同盟国日本に対する、まして駐日大使の発言かと呆れるほどだ
が、これも国内の空気に大きく影響されている証拠だとも、考えられる。
これらは後述するように、国としての「大義」から逸した行動といわざるを得ないと考える。
米国内では慰安婦問題に関して、各メディアの日本糾弾の矛先が厳しい一方、国民
の真珠湾参りも多いということだが、最近刊行されたローゼンバークの「アメリカは忘れない、記憶のなかのパールハーバー」には、『パールハーバーこそ、現在のアメ
リカ人にとって、《記憶》の持つ意味を明かす重要な出来事だ」と記述されており、
日本に対する距離感が縮まっていないことを感じさせる記述であった。
こういう空気が国内にあるから、各メディアはせっせと書くのだろうし、また慰安婦決議案が浮上してきたのには、日本の防衛政策が他人任せなのに業を煮やして「お灸を据えよう」という裏の意味にあるのではとまで言われているようである。
韓国の「朝鮮日報」には、韓国駐米大使館員の話として、「決議案に拘束力がないものの、史上初めて米議会で採択された場合、国務省もこうした面を対日外交に適応するしかないと考えている」と伝え、「日本人拉致問題で北朝鮮と対立する日本の態度が、6ヵ国協議合意に支障をきたすことに対する米国の不満が表出したため」と、
お有難い講釈までして下さっている。しかし、日本政府の北朝鮮に対する主張は、米国が失いつつある「大義」そのものを護っているともいえる。
戦後、「黄金時代」といわれた米国には、国としての「均衡」が保たれていた。しかし、ボーダーレスの加速化で一層の多民族国家の構成を余儀なくされた米国は、こ
の「均衡」が崩壊し、従来、米国が「大義」として堅持してきた、正義、民主主義、
自由、権利などが、政府をはじめとする各層から抜け落ち、「和」も希薄化し、混迷
してきていることを改めて感じる。日本も同様に揺らぎ放っしだが、かろうじて保っているような状態なのは、島国国家のお陰だともいえるだろう。
多民族人工国家、米国は、何事にも収拾のつかない議論が百出し、本家の米国人を押し退けるような米国人系外国人らの意見が噴出するようになり、米国人系韓国人(
いや、中国本土からの策謀も )らから持ち上がったのが「慰安婦問題」といえよう。
ところで従軍慰安婦という用語は、日本、韓国マスコミとも今年2月頃まではほと
んどが用いていたが、以降、国内では「朝日」が残すのみ?で、韓国でも「従軍」が落ちているケースが多くなった。
二、慰安婦決議案を「日本は気にすることない」というが、各国首脳も気にしている
さて、本論の「慰安婦問題」だが、米国の日本研究家と称する人たちの「慰安婦決議案」関する発言には、「日米関係に危険をもたらすものだろうか、それはないだろ
う。決議案が可決されても、下院の見解の表明に過ぎない、実質的な影響力はない。
政治家の(支持者層に対する)パーフォーマンスだ。日本政府は沈黙を守っていれば
いい」という類いの意見が、筆者が見た限りでも4件はあった。この程度の状況認識で「よいものだろうか」。皮肉な見方をすれば、日本なんかガタガタ言わずに、黙っていればよい、という本音が見え隠れするようにすら感じた(「NEWSWEEK」
07年3月11日号には、「下院議員たちには、この決議案が日本との関係悪化につ
ながらないと考えているようだ」とあり、また、決議案提出者日系米国人のマイク・
ホンダ議員などは2月のフジテレビに出演した際、「日米関係をさらに強固にする」
とまで言って切っている。
しかし3月初めには、オランダの外相が日本を批判、カナダの外相も国会答弁で批判し、その直後、カナダ国会下院の国際人権小委員会では「軍の性的奴隷とされた女性への公式謝罪」決議案が1票差で採択されている。
同時期、豪州のハワード首相は決議案の行方に懸念を示し、シンガポール首相も決議案について「当惑を感じる」と漏らしている。
また、フランスおよびオーストラリアの新聞では、決議案について日本への非難め
いた記事を読者の感想とともに載せていたが、これでは日本への印象も悪くなる。
このように、米国以外でもかなりの反応があるのに、日本研究家らの「国内問題」
だとする発言の真意に疑問を感じざるを得ない。
一方、中国では温家宝首相の来日を前にした3月12日の中国各紙は一斉に、安部首相が従軍慰安婦問題で「おわびをしたことを評価する」と報じたが、ここですでに
「微笑外交」をスタートさせているのだ。
三、強制徴用はあったのか、CNNの「日本の謝罪」に関するアンケート結果
今年の3月下旬の「朝鮮日報」に、「日本の中曽根元首相の回顧録には『軍隊時代に作った慰安所には慰安婦がおり、彼女らは強制動員されたものである』と書いてある」いう記事が出たことがある。
兎に角韓国の「朝鮮日報」「中央日報」などのメディアは、昨年来いやそれ以前から、この「慰安婦問題」には相当熱を入れているが、韓国社会全体としては思い入れに濃淡があるように感じられる。
その一つが、米国内のメディアが一斉に「慰安婦問題」の糾弾報道を行っているのに呼応したCNNが3月4日に開始した「日本は、再び謝罪しなければならないか」
のインターネット・アンケート調査の反応から感じたことである。
開始直後の第1回の集計結果は、投票者162万人のうち、「NO」が81%、「
YES」19%という結果が出た。すると「中央日報」「朝鮮日報」ともに紙面で、
「韓国国民よ立ち上がれ」というような檄を飛ばしたものの、その後の第2弾のアン
ケート結果も200余万人のうち、NO76%、YES24%の結果に終わった。
このCNNのアンケート調査について、広告料金稼ぎの操作をやってるという風聞
が米国内で流れ、そのためか、最終結果は「中央日報」などにも載らなかった。
いずれにせよ、韓国三大メディアのうちの二大メディアがあれだけ騒ぎ立てたのに、
日本よりもネットユーザーが遥かに多く、熱しやすい韓国人なのに「YES」が24
%入らなかったことは、意外に冷めてみているなと思った。
しかし一方、米国人系韓国人はヒートオーバー気味だ。今回の決議案では、年初から彼らの動きは活発だったが、先般もバージニア大学での銃乱射事件勃発直後は、「
安部首相の訪米に合わせての活動は中止する」と言っていたのが、舌の根も乾かないうちに前言取り消しで活動を再開し、ホワイトハウス前で抗議行動を起こした。
ところで、強制連行を認めた形の「河野談話」については、河野談話の作成にかかわった石原信雄元官房副長官は、「当時、韓国側は談話に慰安婦募集の強制性を盛り込むようにと執拗に働きかけ、そして、個人補償は要求しない、の両天秤をかけてきた。これに対し、日本側は『強制性を認めれば、韓国側も矛を収めるのではないか』
との期待感から、強制性を認めることを談話の発表前に韓国側に伝えた」と語ってい
る。これからしても、日本側では聞き取り調査以外に強制徴用・連行の事実の証拠を把握しておらず、言い分通りにしたたげのことだったのだ。全く情けない話だ。
この件については、河野洋平自身が、平成9年、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」の会合で「強制的に連行されたものかについては、文書、書類では(証拠は)なかった」と述べている。
この強制徴用・連行について、安部首相は3月1日、国会で「狭義の連行(強制連
行)はなかった」と、共産党の志位和夫委員長に対して答弁した。
ところがこの発言によって、米国下院ではそれまで決議案に反対していたダナ・ロー
ラバッカー議員(共和党)とその他2人の共和党員が賛成に回る結果になった。
米国下院に「慰安婦決議案」を提出している日系米国人のホンダ議員の提案理由は
「河野談話」の「慰安婦はすべて日本軍に直接に強制徴用され」を下敷きにしているのである。
安部首相の「狭義の強制性はなかった」の言葉は、軍の関与による強制連行を否定したものであったが、それを米国下院議員らばかりでなく、米国のメディアをは
じめ日本の一部メディアも、安部首相の発言を全面否定したのである。安部首相はその後、真意を理解して貰えなかった悔しさを、度々口にしている。
四、日本政府・衆参院議員・日本大使館の動き
昨年秋に山谷えり子首相補佐官が、米国下院の動きが、それまでの様子とは違うこ
とを塩崎恭久官房長官に報告、働きかけを促したが全く動こうとしなかった(その後、
米国のロビリストを動員したが、すでに、下院では、韓国系ロビリストの活動が大き
く先行していた)。要するに、この問題に限らず、米国議会などの要人とのネットワー
クが日本政府として全く無いために動きようがないという情けない状態なのだ。
世耕補佐官は今年に入って国務省を訪ねたが、誰も相談には乗らず、最後にいやいやながら?出てきたヒル次官補は、事情が分からないまま、「兎に角、これは人権に
関わる問題なので」と逃げられたらしい。
駐米日本大使館の動きもにぶく、加藤良平大使が動いたのが2月14日、それも議会に対して簡単に日本の立場を記したペーパーを配布しただけだったらしい。
ニューヨーク総領事館では、メディアが集中している地域にもかかわらず、全然動こうとしない。
ロサンゼルス総領事館は、ロサンゼルス・タイムス3月7日付の「天皇陛下は謝罪を」の記事に対して抗議をしたが、これは総領事の自己判断だったようである。
この程度のことにも何も対処できず人脈を築けない外務省の出先機関は、米国に限らず、無駄飯食いばかりで、国家公務員として失格に値する。
衆参院議員の動きとしては、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」
その他の動きはそれなりにあったが、安部首相の「河野談話」の踏襲以後は、その腰砕けさに議員らの失望を買っている(安部首相側は、米国の情勢に合わせたためと弁解しているが、間に合わせ同然の発言は、官邸の人材不足をモロに表している)。
意外なのは、民主党の衆参議員20人もの有志の「慰安婦問題と南京事件の真実を検証する会」で、3月初めに「河野談話の見直し」て活動を始めたことだ。その後も、
前述の石原信夫氏を招き勉強会を開いたが、鳩山由紀夫幹事長の「河野談話は事実に
基づいた談話と認識している。党として(談話を)尊重する」との意向を示されたことで、以後は残念なことに活動が停止してしまったようだ。
活動が止まったのは、自民党の他のグループも同様で、米国下院を訪問して、状況説明、把握をする予定だった議員らに対しは党内から、「この時期、刺激しては」と
いうような声が出て、渡米を封じられたようだった。
五、米国議会関係の動き、米国議会調査局の調査報告書
前述のようにダナ・ローラバッカー議員が決議案賛成に回ってから、表向き反対の立場を取っているのは上院のイノウエ議員(民主党)だけになっているようである。
3月に下院で開かれた公聴会では、証言に立ったのは3人の元慰安婦らで、日本側立場の証言者や中立の立場の証言者が招致されていなかった、という不手際が罷り通っていたのである。これでは片手落ち、というよりは作為的という他はない。
そうした中、4月上旬に米国議会調査局は議員の審議用資料(23ページ)を作成
し配布した。
そこには、日本軍による女性の強制徴用について、「日本軍は恐らくほとんど徴募を直接に実行しなかっただろう。特に朝鮮半島ではそうだった」、「今、下院に提出されている慰安婦問題での日本糾弾の決議案の『日本軍による20万人女性の性の奴隷化という表現で非難する日本軍による組織的、政策的な強制徴用』はなかった」と
の趣旨が示された。その一方で、安部首相らの強制徴用の否定言明に関しては、「慰安所の設置や運営、慰安婦の輸送、管理などを矮小化している」、「いかなる軍の強制もなかった」とする点では、「日本政府自身の調査をも含む元慰安婦らの証言等矛盾する」と指摘し、その根拠となる元慰安婦による英米で刊行された図書を示した。
また、「日本政府が慰安婦問題に対して……アジア女性基金の設立などで元慰安婦たちに償い、助けるための日本政府の真実の努力をした」と評価。その上で、「も
し諸外国が日本に今公式の賠償を求めれば、『日本側は戦時中の東京大空襲の死者8万人や原爆投下の被害への賠償を求めてくる潜在性もある』」と述べ、加えて、「下院決議案は日本の首相や政府に改めて謝罪の表明を求めているが、河野談話や歴代首相の「アジア女性基金」の賠償受け取りの女性への謝罪の重要性があり、それでも不十分だとする批判者たちはなぜ不十分なのか理由を説明していない」と、謝罪要求への懐疑点を明確に述べている。
さらに「米側の一部が日本の国会での謝罪決議」を求めることに、「そうした決議が成立する見通しは極めて低い」と、要求の非現実性を指摘した。
このように、報告書はどちらかといえば日本側に立っている印象で、筆者としては敵ばかりではなかったと安堵したものの、下院の決議案賛成の議員たちはこの報告書を直視することはないのだろうと思っていたら、案の定、議員に再考を求める米国議
会調査局の報告書が出たにもかかわらず、相変わらず議員の意気は衰えそうもない。
というのは、下院ではどの程度の議員が賛成の立場を取っているか、皆目分からないままでいたら、5月に入って決議案共同提案者総数が102人となったことが発表
されたことで、その意気止まらずを実感した。
下院の議員総数は450人前後なので、約4分の1程度が賛成派となっているわけで、ホンダ議員は決議案の委員会採決を5月中にめざす構えをみせている。
そういう情勢の中、5月6日付AP通信は、次のような記事を載せた。
、
「終戦直後に占領米軍の命令を受けた日本政府の内務省などが、東京はじめ茨城県などの地方自治体に「慰安婦」を集めるよう指示を出し、合計7万人以上の女性が売春に従事した。米軍当局はそれら女性の一部は強制徴用されたという報告があることを知りながら慰安所開設を認めた。そして、当時慰安所にかかわった日本側関係者数人
(実名)の談話を取材」などの内容だった(前段として同種の記事は、AP通信から
4月26日にも出されていた)。
これを受けホンダ議員は、「実態について、議会調査局に調査を依頼した」、「日本軍の慰安婦は日本帝国軍隊の政策として性的奴隷という目的のために少女や女性を
拘束し強制し拉致したのだから、米軍のそれとは異なる」と述べたのである。
これでは、安部首相の「狭義の強制」を否定してきたのに、今度は自分にも「火の粉」がかかっりそうになって慌てている姿が目に見えるようだ。
この米軍慰安婦問題はある程度周知の事実であったが、今回、安部首相や日本側では、この問題を下院での「従軍慰安婦決議案」に直接ぶつけることは、得策ではない
と抑えていたものである。
このネタは誰かが、このままでは日本にとって最悪の状態を招きかねないと、窮余の一策としてAP通信に持ち込んだのではないかなと考えていたら、97年当時、慰安婦問題に関して中曽根康弘元首相がAP通信のインタビューを受けていたことをことを思い出した。
六、慰安婦決議案採択の可能性は「半々」と考えた理由
ここで、冒頭の「慰安婦決議採択の可能性は『半々』」に戻るが、その理由はごく簡単な話である。
まず、下院での決議採決を5月中にと目論んでいたホンダ議員は、自分から言い出した議会調査局の調査結果を待たなければならない。そうなると当然5月中の委員会での採決はストップする。再開しても委員会での取上げられるか危ないのでは。
二番目に、議会調査局の前回報告書では触れていないが米国占領軍慰安所の問題は、
議会調査局では承知していた、と推測できる。これは当然「恥部」であり、敢えて出さなかった。だからこそ、議会調査局は、報告書に婉曲な表現で下院議員たちに自制
を求めていた。
三番目に、それを今回出さざるを得ないとなれば、議員たちが行おうとする「日本叩き」の反動として、米国の「恥部」を明かるみに出てしまう。そうでなくても、現在の米国はいろんな形で世界各国からのバッシングの標的にされている。
四番目に、ホンダ議員たちは、軍の関与の強制連行を錦の御旗にしていたのが、今度はその跳ね返りを自分たちがかわさなければならない窮地に追い込まれてきた。
五番目に、これらのことを米国およびホンダ議員として避ける手段として残されているのは、この決議案を見送らざるを得ない、という結論なのでは。
六番目は、この決議案を取り上げるか否かを決めるのは外交委員会。この委員会の
ラントス委員長(民主党)は、先般の安部晋三首相が訪米の際に「憲法改正」について話し合い、「改正に賛成」と賛意を表するなど、リベラル派ながらも公正な態度を示せる議員と見受けられるので、彼自身が委員会で取り上げることを「ノー」と判断する可能性が考えられる。
以上のような理由だが、これら「見送り」の推論は甘いだろうか。
ご意見があったら是非お聞かせ頂きたい。
以上 注]
・中国の表面的な活動はないが、ホンダ議員は昨年だけでも反日団体「世界抗日戦争史実連合会」等から11万ドルの献金がある、韓国人系団体とは、カリフォル
ニア州の初出馬当時から、支援をかなり受けているようであるが詳細は不詳。
・アジア女性基金については、村山富市元首相が「濫用国金返納事件」として告訴され、5月17日に東京地方裁判所民事法廷で、最初の公判が始まる。
追記
慰安婦決議案採択の見送りが5月22日に決定した
07年5月24日
前述のような、「慰安婦決議案採択の可能性は『半々』」の結論を出してから二週
間が過ぎた。
その間、筆者が結論を出す根拠の一つAP通信記事の日本語訳に一部大きな誤訳があり、これだと採択は実行され「結論」とは相反するものになるなと思った。
しかし事態は、5月22日の米国下院外交委員会で決議案採択の先送りが決定した。
その背景としては各種決議案を抱える中、月末にメモリアルデーの休会を控え、処理時間の不足もあり、慰安婦決議案が除かれのだ。そして、上程される主な決議案は次のような「対テロでの韓国の努力に謝意を表する決議案」、石油資源確保のためダルフール紛争のスーダンに肩入れする中国に対する「虐殺の防止に向けてスーダンへの影響力の行使を求める決議案」などとなった。
中国、韓国が懸命に推進してきた慰安婦決議案が除かれ、中国にとっては、スーダンに関する決議案がクローズアップされるなんて皮肉な話である。
これから先、慰安婦決議案が廃案になるか否かは目下のところ全く予断を許さないが、気になるのは、共同提案者が意外にも徐々に増加してきている状況である。
しかし、筆者としては今後の成り行きとして「六・四で流れる」と考えている。
なお、カナダ議会でも同様の決議案がすでに下院国際人権小委員会で採択されていたが、5月中旬には上部の外交委員から「再調査を行うよう」と差し戻されている。
筆者の今回の「六・四」は、この差戻しを加味した上での「結論」である。
蛇足であるが興味ある現象としては、この慰安婦決議案報道を続けてきた日本およ
び韓国の主要紙が、この「先送り」に関する報道を行ったのは、筆者の知る限り、日本、韓国とも一紙だけであったことである。
以上
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